梅田先生からの感想


高橋 究先生

梅田です。
先ほどRCコラムの永野先生のメールを拝見してやっと納得できました。
anal vergeより約10cmと聞いていたのですが、マイルズをやったわりには切除標本の肛門側断端の 距離があまりにも短いのでどうしたのだろうと思っていました。
切除した後、腸管は縮みますので、短くは見えますが、実際は断端3cm程のところで切ってあるのだと 思います。あのレベルで切って繋いでも多分大丈夫だとは思います。
しかし腫瘍の大きさから確実性を期待できる治療を考えると私も悩んだと思います。肛門側から10cmの 所の腫瘍なら肛門側の断端が少なくとも3cmは最低欲しいところです。多分ギリギリだったと思います。 それは腫瘍が大きくて小骨盤内の手技がかなり窮屈でやりにくかったと思われるからです。
一度決めた手術手技でギリギリではあるが一応の目標を達成できたところで、マイルズに切り換える勇気 (あえて勇気という言葉を使います)に心から敬服致します。
外科の治療は、患者さんに身体的なハンディキャップを作って病気を治すという野蛮な治療です。 外科医は何とか生理的な機能を温存して最小限の臓器切除で手術を終わらせたいという気持があります。
一方、癌を確実に切除するためにその切除範囲については一応のスタンダードがあります。しかし、 統計的な処理において決められた範囲は100%の安全を保証する物では無いのです。
機能欠落による患者さんの精神的肉体的苦痛、そして癌の予後、両者の境は非常に微妙なのです。
私も手術の時、同じような決断に迫られることが多々あります。
私の場合迷ったらやれ!と心に決めています。迷う気持は、自分の経験において重大な第六感が働いて いるときだと思うのです。
しかし、それを実際に行う最終的な原動力(勇気)は、患者さんとの信頼関係と医師の己を捨てた ヒューマニティだと思います。

Komei Umeda MD, PhD
Medical Director of Ogura Hospital
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2004年4月21日